生前からできる遺留分対策

文責:弁護士 井川 卓磨

最終更新日:2025年02月20日

1 生前贈与

 生前からできる遺留分対策のうち、最もシンプルで、かつ、早いうちから行うことができれば効果的なのは、生前贈与です。

 相続開始前10年間の特別受益は遺留分に含まれますので、相続開始10年前までに、どの程度生前贈与ができるかというのが重要になります。

 そして、相続開始10年前までに完了した生前贈与は、原則遺留分対象外ですので、その効果は大きいです。

 仮に、40代の頃から30年間、暦年贈与を行い、その後10年経過した後死亡した場合には、1人の受贈者につき、暦年贈与の枠だけでも3300万円を遺留分対象外にできることになります。

2 生命保険金

 生命保険金は、相続財産に占める割合が、遺留分制度の潜脱と認められるほど高くなければ、遺留分侵害額の対象とはなりません。

 法定相続人の数×500万円の相続税の控除もありますので、相続対策としてよく使われる方法です。

3 養子縁組

 養子縁組は、遺留分権利者の法定相続分の割合が下がり、よって遺留分割合も下がりますので、効果的な方法です。

 ただし、遺留分対策のみを目的として養子縁組をする場合等は、遺留分制度の潜脱として認められないケースもあります。

 また、そもそも、養親と養子という身分関係を形成することになり、養子に相続権も生まれることになりますので、養子縁組まで行うか否かは、慎重に検討すべき事柄です。

4 廃除

 一般的な遺留分対策ではないですが、遺留分を渡したくない理由が、著しい非行に基づくものなど、その者を相続人から廃除するのに相当な事由がある場合には、生前に廃除の申立てをして、あらかじめ相続人でなくしておくというのも方法の1つです。

 ただし、ハードルは非常に高いですし、裁判所の審査も入りますので、重大な事由がある場合にのみ検討すべき方法です。

 また、廃除は一身専属的なものであり、廃除された者の子は相続人になりますので、「その一家」に渡したくない等の意向まで叶えるものでもありません。

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