相続税の申告が必要なケース

文責:税理士 井川 卓磨

最終更新日:2024年02月26日

1 相続税の申告が不要な場合もある

 財産を相続した場合でも、相続税の申告が不要な場合があります。

 それは、相続財産が基礎控除額を下回っている場合です。

 基礎控除額とは、【3000万円+法定相続人の数×600万円】という計算で導かれる金額で、相続財産が基礎控除額を下回る場合には、相続税がかからず、申告も必要ありません。

 したがって、例えば、法定相続人が配偶者とその子供2人の3人であり、相続財産が3000万円である場合、基礎控除額(4800万円)の方が高いので、相続税がかからず、申告も不要となります。

2 相続税の申告が必要な場合

⑴ 相続財産が基礎控除額を上回る場合

 相続財産が基礎控除額を上回る場合には、相続税の申告が必要となります。

 なお、相続税には、相続税の金額を抑えることができる様々な特例(配偶者の税額軽減、小規模宅地の特例など)があり、これらの特例を適用することで相続税がかからなくなるような場合もありますが、その場合でも相続税の申告は必要となりますので、注意が必要です。

 

⑵ 相続時精算課税制度を利用した場合

 相続時精算課税制度とは、2500万円までは、非課税で生前贈与を受けることができ、贈与者が亡くなった際に、生前贈与した金額を相続財産に加えて計算する制度です。

 基礎控除額が4800万円で、亡くなった方の財産が3000万円、相続時精算課税制度によって贈与した金額が2500万円であれば、5500万円(3000万円+2500万円)を相続財産として計算しなければなりませんので、基礎控除額を上回り、相続税の申告・納税が必要となります。

 

⑶ 亡くなる直前に暦年贈与がなされていた場合

 毎年1月1日から12月31日までの間に贈与された金額が110万円以下であれば、贈与税がかかりません。

 これを暦年贈与といいます。

 暦年贈与は、自分が亡くなった際に相続人となる人に対して、生前贈与をしておくことで相続財産を減らすことができるため、相続税対策としてよく使われています。

 令和5年以前に行われた暦年贈与のうち、亡くなる直近3年以内のものについては、その金額を相続財産に加えて計算しなければならないことになっています。

 また、令和5年の税制改正によって、令和6年1月1日以降に行われた暦年贈与のうち、亡くなる直近7年以内のものについては、その金額を相続財産に加えなければならないこととなりました。

 暦年贈与のうち、亡くなる直前に行われたものについて相続財産に加えなければならない結果、相続財産が基礎控除額を超えた場合にも、相続税の申告・納税が必要になります。

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