遺言を作成するタイミングはいつがよいか

文責:弁護士 井川 卓磨

最終更新日:2024年01月31日

1 なるべく早めに遺言を作成した方がよい

 「遺言を作成するタイミングとしてはいつがいいですか」という相談を受けることがよくあります。

 相続の専門家からの答えとしては、「なるべく早めに遺言を作成した方がよい」というのが適切でしょう。

 なぜ、なるべく早めに遺言を作成した方がよいといえるのかを、以下では説明していきます。

2 遺言書はいつでも書き直すことができる

 遺言書は、遺言を作成する能力がある限り、いつでも書き直すことができます。

 書き直すことができる回数についての制限はありません。

 遺言書を作成することには、相続に関する紛争を防止することや、相続人の手続きが簡便になるなどの多くのメリットがあるため、遺言者のその時点での意思を遺言書に残しておくことが、本人にとっても、相続人にとっても、非常に重要だといえます。

 ただし、どのような内容の遺言書であっても、遺言書があった方がよいという訳ではありません。

 遺言書の要式を備えていない無効な遺言書というのはもちろん、有効な遺言書であったとしても、その内容が相続の紛争を招くものであったり、手続きがスムーズに進められないものであったり、相続税に関する配慮がされていないものであったりすると、そのことが原因でトラブルになりかねません。

 そのため、遺言書を作成する際には、専門家に相談をしてから作成をすることが大事です

 一度、専門家に相談をしたことがあれば、その後の事情の変化によって遺言書を書き直す際にも、どのような観点に注意すればよいのかが分かるようになると思います。

3 いつ万が一のことがあるかが分からない

 人が亡くなる原因はさまざまですし、自分にいつ万が一のことがあるかは誰にも分かりません。

 自分はまだ若いし、病気もしていないという理由で、遺言書を作成されないという方はいらっしゃるのですが、そのような方であっても、いつ遺言書を書けなくなってしまうか、亡くなってしまうかは分かりません。

 その時になって本人が後悔をしても手遅れになってしまいますし、相続人の方が、遺言書さえ書いていてくれれば、相続のトラブルを避けられたのにという事例を多くみてきました。

 そのため、自分に万が一のことがあって、自分の相続人が困らないように、遺言書は早めに作成したおいた方がよいとおすすめするのです。

 より望ましいのは、遺言書には、自分が亡くなるまでの万が一の事態にも対応した内容を記載しておくことです。

 たとえば、自分の長男に相続させようとした財産について、万一、長男が自分よりも先に亡くなってしまった場合には、その子どもに相続させるなどの条項を入れておくことが考えられます。

 もちろん、そのようなことが起こった後に、遺言書をそれに合わせて書き直すことにすればよいのですが、そのときに自分が遺言書を書き直せる状態にはない可能性もあります。

 そのため、このような内容の条項も入れておいた方が望ましいといえるのです。

 どのような条項を入れておくのがよいのかは、なかなか専門的な知識や経験がなければ思いつきませんので、専門家に相談して決めるのがよいでしょう。

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