相続税の申告期限に間に合わないときの対応

文責:税理士 井川 卓磨

最終更新日:2023年09月06日

1 相続税には申告期限がある

 被相続人が亡くなり、相続した財産が一定の金額を超えた場合、相続税を納めなければなりません。

 そして、相続税については、市県民税や固定資産税などのように請求が来たらその金額を支払えばよいというものではなく、自ら申告と納税を行わなければなりません。

 しかも、申告と納税には期限があり、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

 もっとも、10か月という限られた期間内に、被相続人の財産を調査してその価値を適切に評価し、相続人が複数いる場合には財産の分け方についての協議(遺産分割協議)をまとめることが必要になりますが、どうしても期限内に間に合わないという場合もあるかと思います。

 そのような場合、どのように対応したらよいでしょうか。

2 財産の評価が終わっていない場合

 相続財産に土地や建物等の不動産が多く含まれていて、その価値の評価に時間がかかってしまい期限に間に合いそうにないという場合、どのように対処したらよいでしょうか。

⑴ 概算で申告をする

 相続税の申告期限の時点で、一切申告をしていなかった場合には無申告加算税が課せられる可能性がありますし、期限後に申告をしたとしても遅れた日数に応じて延滞税を支払わなければなりません。

 そこで、これらのリスクを回避するために、財産の評価額は概算でよいので、とりあえず申告・納税をしておくという対処法が有効です。

 

⑵ 概算額は多めに見積もるべき

 概算額で申告をする場合、財産の価値を多めに見積もっておくのがおすすめです。

 これは、少なめに見積もった金額を前提に相続税の納付を行ったが、本来納付すべき金額に足りなかった場合、「修正申告」が必要になります。

 その場合、実際に納付した金額と本来納付すべき金額との差額部分について延滞税がかかります。

 他方で、概算額を多めに見積もると、納税の段階では本来支払うべき金額よりも多くの金額を納付したことになりますから、その後の手続きとしては払い過ぎた税金の返金を求める「更正の請求」という手続きになります。

 更生の請求が認められれば、本来納付すべき金額と実際に納付した金額の差額の返金が受けられますので、延滞税がかかりません。

3 遺産分割協議が終わっていない場合

 財産の調査・評価は終わっているが、どのように財産を分割するかという遺産分割協議がまとまっていない場合、どのように対処したらよいでしょうか。

⑴ 法定相続分で分割した前提で申告・納税を行う

 この場合、法定相続分に応じて遺産分割を行ったという前提で、相続税の申告と納税を行うことになります。

 なお、相続税には遺産分割協議が終わっていないと適用できない特例もあり(例:小規模宅地の特例、配偶者の税額軽減など)、遺産分割が完了していない場合にはそのような特例は適用しない前提で申告と納税をしなければなりません。

 そして、実際に遺産分割協議がまとまった段階で、その分割内容を反映させた申告書を提出し、特例によって税額が減る場合には更正の請求を行い、払い過ぎた税金の返金を受けることになります。

 

⑵ 申告期限後3年以内の分割見込書の提出が必須

 上記のような方法をとる場合、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することを忘れないようにしましょう。

 この書類の提出を忘れてしまうと、遺産分割協議がまとまった後の更正の請求において、特例の適用が受けられませんので、注意が必要です。

4 相続税のご相談は税理士へ

 相続税の申告期限に間に合わない場合でも、上記のような対処法をとることは可能です。

 しかし、期限内に申告の納税を行うことができるに越したことはありません。

 相続が発生したら、期限までに申告と納税をすることができるように、どのようなスケジュール感で動いていくべきか、早めに税理士の相談されることをおすすめします。

PageTop